あなたは、
「トラウマがあるから、今の自分はこうなっている」
そう感じたことはありませんか?
アルフレッド・アドラー は
「トラウマはない」と述べています。
アドラー心理学は、
書籍「嫌われる勇気」によって広く知られるようになりました。
では、
- トラウマとは何か
- なぜアドラーは「ない」と言ったのか
この2つを整理していきます。
トラウマとは何か
一般的に「トラウマ」とは、
過去の体験による心の傷であり、
その影響が、普段の生活の中に表れているものを指して使われます。
この言葉は、
影響の現れ方や気づきやすさの違いによって、
大きく2つの意味で使われています。
① 医学的に扱われるトラウマ
ひとつは、
PTSD(心的外傷後ストレス障害) のように
- 命の危険に関わる体験
- 強い恐怖や衝撃を伴う出来事
によって生じるものです。
例えば、
- 事故や災害
- 犯罪被害
- 紛争体験
など、客観的にも強いインパクトがある出来事です。
② 心理的なトラウマ(広い意味)
もうひとつは、より個人的なものです。
- 当時の感情がそのまま残っている
- 本人も原因に気づいていない
といった形で、
現在の行動や感じ方に影響しているものです。
例えば、
- なぜか同じパターンを繰り返す
- 理由がわからないまま反応してしまう
といった状態です。
これは「出来事そのもの」よりも、
・その体験がどのように意味づけられたか
・その体験で何を学習したか
が影響しています。
また、こうした体験は、
年齢が低い時期のものであるほど
意識にのぼりにくく、
自分でも気づきにくいことがあります。
アドラーの「トラウマはない」とはどういう意味か
ここで重要なのは、
アドラーが否定しているのは
「出来事」ではなく
“原因としての使い方”です。
アドラー心理学では、
- 人は過去によって決まるのではなく
- 目的に沿って現在の行動を選んでいる
つまり、今のメリットを得るために
その行動を選んでいると考えます。
そのため、
「過去にこういう出来事があったから
今の自分はこうなっている」
と固定的に捉えることに対して、
「そうとは限らない」と言っているのです。
なぜ「トラウマはない」と言うのか
アドラーがこの言葉を使った背景には、
- 変われない理由として過去を使ってしまう
- 現在の選択を見えなくしてしまう
という問題があります。
例えば、
- 「トラウマがあるから仕方ない」
- 「だから私は変われない」
と考えると、
そこから先の可能性が閉じてしまいます。
そのため、
「トラウマはない」と言うことで
視点を現在に戻そうとしているのです。
先ほどのメリットという考え方で言えば
「トラウマがあるから変われない」と考える人は
・変わろうとしなくて済む
・「変われない自分はダメだ」と責めずにいられる
といった側面が生まれることもあります。
では、トラウマは「ある」のか「ない」のか
ここまで整理すると、答えはシンプルです。
どちらか一方が正しい、という話ではありません。
医学的には「ある」と扱われる領域があり、
一方で、原因として固定する見方には注意が必要です。
つまり、
トラウマの「有無」を決めることよりも、
どのように捉えるかが重要になります。
トラウマという視点の使い方
ここで一つ大切なのは、
同じ出来事でも、
その捉え方によって見え方が変わるという点です。
過去の出来事を、
「だから変われない」と捉えることもできますし、
「なぜ同じことが起きているのかを知る手がかり」として
捉えることもできます。
そしてもう一つ大切なのは、
過去の出来事の「原因」に気づいていたとしても、
それだけでは見え方はあまり変わらないことがある、という点です。
例えば、
「あの環境で育ったから」
「親の影響があるから」
といった形で理解していても、
そこから先の見え方が変わらないまま、
同じ感じ方や反応が続いていることもあります。
そのときに大切になるのは、
・その体験がどのように意味づけられたのか
・その体験の中で、どのような受け取り方や学びが生まれたのか
という部分を見ていくことです。
そうした視点で整理していくことで、
これまでとは違った見え方が生まれ、
これまでと同じ反応を繰り返さない選択が
見えてくることもあります。
まとめ
トラウマという言葉は、
- 医学的な意味
- 心理的な意味
の両方で使われています。
そしてアドラーは、
その存在そのものではなく
「原因としての使い方」に疑問を投げかけています。
大切なのは、
過去の出来事そのものではなく、
それをどのように捉え、どのような意味づけをしているかです。
同じ出来事でも、
その捉え方によって見え方は変わり、
そこから選べる行動も変わっていきます。
トラウマは、
変われない理由として固定するものではなく、
自分の状態を理解するための手がかりとして
捉えることもできます。
もし、
・自分の中で起きている反応を整理してみたい
・同じことが繰り返される背景をもう少し見ていきたい
と感じたときは、
そうした部分を言葉にしながら整理していくことで、
これまでとは違った見え方が生まれることもあります。
そうした整理を、対話を通して進めていくこともできます。
必要に応じて、その過程で
感情の整理や見え方の変化をサポートする関わりも行っています。
関連記事
この記事で整理した内容とあわせて、
・アドラー心理学の捉え方の誤解
・トラウマがどのように影響しているのか
・繰り返される反応がどのように変わっていくのか
をもう少し具体的に見ていきたいときは、
こちらの記事も参考になります。




